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反資本主義
新自由主義の危機から〈真の自由〉へ

【内容】
白井聡氏、激賞!
「われわれが今まさに知るべき事柄がぎっしり詰め込まれている」
「ハーヴェイはマルクスの最良の点を見事に受け継いでいるのである」――(共同通信書評より)

コロナ禍で続けられた人気ポッドキャスト「David Harvey’s anti-capitalist chronicles」の書籍版、待望の日本語訳刊行!

地球沸騰時代、パンデミック、差別と分断、増大する地政学的リスク……。
グローバル経済は、崩壊の危機を乗り越えられるのか? マルクス理論からの分析と大胆な代替案。
著者自身による広範な著述活動全体に対する手頃な入門書、かつベストセラー『新自由主義』の「続編」。

革命とは、一時の出来事ではなく、長期の過程である。

ハーヴェイによれば「資本主義の新自由主義的形態には深刻な問題があり、その是正は必要」である。だが「新自由主義が決定的問題」なのではない。「問題は資本主義なのであり、その特殊な新自由主義的モデルではない」のである。そうであるとすれば、まず「資本主義」そのものの問題とは何か。――「日本語版解説より」

世界的に著名なマルクス主義理論家デヴィッド・ハーヴェイほどの明晰さと先見性とをもっている人はなかなかいない。そのベストセラー『新自由主義』の出版(原著二〇〇五年)以来、ハーヴェイは新自由主義的資本主義の展開だけでなく、それに対して立ち上がった急進的対抗潮流をも追いかけてきた。経済危機と階級闘争とネオ・ファシズム的反動が渦巻く今、ハーヴェイは、資本主義に対する社会主義的代替案(オルタナティブ)がいかにして可能になるかを示し、社会主義への移行が運動によっていかに組織されうるのか、そしていかに組織されなければならないのかを明らかにする。ハーヴェイは危機と可能性について熟考するが、それを示す本書は、旧著『新自由主義』の最新版であり、その二〇〇五年の出版時点から今日までにわたる時代を鋭く批評するものである。――本書の編者の一人、ジョーダン・T・キャンプの「はじめに」より


【内容目次】
[はじめに]新自由主義的資本主義のネオ・ファシズム的転回 ジョーダン・T・キャンプ
 社会変革を期す人々との交流のなかから……
 資本主義体制内での新自由主義的反革命
 同意調達のネオ・ファシズム的転換
 反資本主義運動の課題

[編者まえがき]新たな社会主義的代替案(オルタナティブ)の討議のために ジョーダン・T・キャンプ/クリス・カルーソ
 デヴィッド・ハーヴェイについて
 本書の成り立ちとそのねらい

序論 グローバルな社会的騒乱
 抗議運動の続発
 問題は新自由主義か、資本主義か
 運動は組織に転化しなければならない
 資本の運動の中心的諸矛盾
 社会主義的、反資本主義的プログラムの「きわどい道筋」

第1部 新自由主義の歴史的展開とそのシステムの矛盾
第1章 新自由主義の歴史
 一九七〇年代以降のアメリカの新自由主義化
 一九九〇年代アメリカ民主党政権下での新自由主義の昂進
 自己責任論の内面化
 二〇〇七〜〇八年の金融危機と新自由主義
第2章 新自由主義の諸矛盾
 需要の縮小と債務の増大
 国家をめぐる現実とイデオロギー
 資本の免罪工作
第3章 権力の金融化
 金融活動の非生産性と貨幣の無限増大の可能性
 量的緩和と格差の拡大
 生産から乖離する投資運用
 信用制度の健全化か、投機的運用か
第4章 権威主義的転換
 極右ポピュリズム運動と新自由主義者の同盟
 政治姿勢に表われる資本家階級
 「ウォール・ストリートの党」の二大分派――大衆動員機構の模索
第5章 社会主義と自由
 諸刃の剣としての「自由」
 住宅問題での資本主義的「自由」
 社会主義社会における真の自由

第2部 資本の地理的展開と複利的成長――資本主義の地政学(ジオポリティクス)と都市空間(アーバナイゼーション)
第6章 世界経済と中国
 中国経済の台頭
 一九七八年以降の中国の変化
 二〇〇七〜〇八年の金融危機と中国経済
 中国経済の金融化
 資本集約型産業への移行と「剣闘士資本主義」
 中国の未来は資本主義か? 社会主義か?
第7章 資本主義の地政学
 権力の領土的論理と資本主義的論理
 資本主義的論理の優位と領土的論理の適応
 資本の地理的運動の歴史的周期性
 資本の空間的回避(フィックス)
 第二次世界大戦以降の資本の空間的回避
 空間的回避の地政学
第8章 成長シンドローム
 資本による労働制度の選択
 「率」と「量」の関係はいかに捉えるべきか
第9章 消費者選択の侵食
 ハドソン・ヤードを訪れて……
 日常生活への資本の侵入
 略奪採取様式(エクストラクティビズム)と消費の複利的成長

第3部 資本主義における略奪と蓄積
第10章 本源的蓄積
 資本の起源の秘密
 転倒する自由権、市場ユートピアのもとでの暴力
 周辺部における本源的蓄積の継続――市場の拡大か、賃労働人口の形成か
第11章 略奪による蓄積
 現代資本主義における略奪による蓄積
 生産と無関係な蓄積様式
 都市の高級化(ジェントリフィケーション)と土地争奪
 年金負担義務の放棄
 略奪による蓄積への対抗闘争

第4部 世界で何が起きているのか─新しい労働者階級、環境破壊、価値移転をめぐる地理的競争
第12章 生産と実現
 労働者階級の消滅か、その再編か
 新しい労働者階級の潜在力
 実現の世界での出来事と生産現場での新たな闘争
第13章 二酸化炭素排出と気候変動
 四〇〇ppmの衝撃
 環境問題に対する終末論的言説
 二酸化炭素の絶対量の削減
 二酸化炭素排出と資本蓄積
第14章 剰余価値率か剰余価値量か
 利潤率均等化による価値移転
 完全機能市場が促す資本の地理的集積利潤率均等化とグローバリゼーションの歴史

第5部 21世紀における疎外の諸相
第15章 疎外
 疎外概念の紆余曲折
 「経済学批判要綱」における二重の疎外
 労働過程での疎外の深化
 労働の疎外を埋めあわす代償的消費様式
 代償的消費様式の機能不全
 瞬間的消費様式の開拓と疎外の昂進
 疎外と政治
第16章 疎外の実相――工場閉鎖の政治力学
 工場閉鎖の衝撃
 ローズタウン工場建設の背景
 労使協調戦略が昂進させる階級意識
 二〇〇七〜〇八年の帰結――労働者と地域社会(コミュニティ)の放棄
 自動車産業の未来

第6部 感染症流行(パンデミック)と資本主義――生存基盤の破壊に抗して
第17章 新型コロナウイルス感染症時代の反資本主義運動
 資本主義の仕組みに対する二重の見方
 「自然」との物質代謝関係と新型コロナウイルスの発生
 新自由主義の四〇年を経ての感染症流行(パンデミック)
 代償的消費様式の最先端モデルの崩壊
 最前線にさらされる「新しい労働者階級」
 新型コロナウイルス危機と反資本主義運動
第18章 集団的窮地に対する集団的対応
 新型コロナウイルスが蔓延するニューヨークから……
 労働者の自己解放と新しい社会の諸要素
 資本主義における技術発展
 技術発展が労働(者)に及ぼす影響
 集団的活動と個人の自由
 社会主義的想像力の好機

本書について 著者および編者からの謝辞
[付録]ロシアのウクライナ侵攻をどう見るか――暫定的な声明(二〇二二年二月二五日)
[日本語版解説]資本主義の克服に資する民衆教育をめざして 大屋定晴
 はじめに
 1……資本主義体制の問題点
 2……新自由主義的資本主義の現局面
 3……「民衆のための社会主義」への「きわどい道筋」
 4……アメリカにおける民衆教育運動――テクストのコンテクストへ
 5……新たな地政学的対立関係の勃発――ロシアによるウクライナ侵攻を目の前にして
 おわりに――日本の「民衆教育」への一寄与として

訳者あとがき/監訳者・翻訳者紹介/著者紹介


【著者・監訳者・訳者略歴】
デヴィッド・ハーヴェイ(David Harvey)
 1935年、イギリス生まれ。ケンブリッジ大学より博士号取得。ジョンズ・ホプキンス大学教授、オックスフォード大学教授を経て、現在、ニューヨーク市立大学特別教授。専攻:経済地理学。都市研究分野の第一人者であり、「人文・社会科学で最も引用される著者の一人」として知られる。
 2005年刊行の『新自由主義』は高い評価を得るとともに、アカデミズムを超えて話題となり世界的ベストセラーとなった。また同年、韓国で首都機能移転のため新たな都“世宗”が建設されることになったが、その都市デザイン選定の審査委員会の共同議長を務めている。2008年には、『資本論』の講義動画をインターネットで公開し、世界中からアクセスが殺到。現在の世界的なマルクス・ブームを巻き起こすきっかけとなった。この講義は『〈資本論〉入門』および『〈資本論〉第2巻・第3巻 入門』として刊行され、世界で最も読まれている入門書となっている。2010 年刊行の『資本の〈謎〉』は、『ガーディアン』紙の「世界の経済書ベスト5」に選ばれた。
 現在も、ギリシャ、スペインから、中南米諸国、中東、中国や韓国まで、文字通り世界を飛び回り、研究・講演活動などを行なっているほか、エックス(旧ツイッター)のフォロワー数も本書刊行時点で18万人を超えており、コロナ禍でも、本書のもとになったオンライン番組の更新を続けるなど精力的に活動し、インターネット空間でも変革を求める人々を世代を超えてインスパイアし続けている。
(エックスID:@profdavidharvey、ウェブサイト:davidharvey.org)

大屋 定晴(おおや・さだはる)
 北海学園大学 経済学部 教授。専攻:社会経済学、グローバリゼーション研究。主な著書:『21 世紀に生きる資本論』(共著、ナカニシヤ出版)、『共生と共同、連帯の未来』(編著、青木書店)、『マルクスの構想力』(共著、社会評論社)など。主な訳書:デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義』(共訳)、同『資本の〈謎〉』(共訳)、同『コスモポリタニズム』(共訳)、同『資本主義の終焉』(共訳)、同『経済的理性の狂気』(監訳、以上、作品社)など。

中村 好孝(なかむら・よしたか)
 滋賀県立大学 人間文化学部 講師。専攻:社会学史。主な著書:『社会学的想像力のために――歴史的特殊性の視点から』(共著、社会思想社)など。主な訳書:ウルリッヒ・ベックほか『個人化の社会学』(共訳、ミネルヴァ書房)、ジョック・ヤング『後期近代の眩暈――排除から過剰包摂へ』(共訳、青土社)、C・ライト・ミルズ『社会学的想像力』(共訳、筑摩書房)など。

新井田 智幸(にいだ・ともゆき)
 東京経済大学 経済学部 准教授。専攻:経済学史、経済思想。主な著書:「デヴィッド・ハーヴェイのマルクス主義経済地理学」(『歴史と経済』政治経済学・経済史学会)など。主な訳書:トーマス・セドラチェクほか『改革か革命か──人間・経済・システムをめぐる対話』( 共訳、以文社) 、デービッド・エジャトン『戦争国家イギリス――反衰退・非福祉の現代史』(共訳、名古屋大学出版会)など。

三崎 和志(みさき・かずし)
 東京慈恵会医科大学 医学部 教授。専攻:哲学。主な著書:『西洋哲学の軌跡──デカルトからネグリまで』(共編、晃洋書房)など。主な訳書:トーマス・セドラチェクほか『改革か革命か──人間・経済・システムをめぐる対話』( 共訳、以文社)、マーヤ・ゲーペル『希望の未来への招待状──持続可能で公正な経済へ』(共訳、大月書店)、『社会主義の理念――現代化の試み』(共訳、法政大学出版局)など。