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私たちの“感情”と“欲望”は、いかに資本主義に偽造されているのか?
新自由主義社会における〈感情の構造〉

【内容】
社会を動かす“感情”と“欲望”の構造分析――
今、欧州を揺り動かしている新たな経済思想

「怒れる若者たち」に熱狂的に支持される経済学者ロルドン。
その“偽造”のメカニズムを、
スピノザ哲学と社会科学の結合によって解明した
最先鋭の資本主義批判

今、パリが燃えている──
「ニュイ・ドゥブ(Nuit Debout)」(夜、立ち上がれ)と呼ばれる新たな抗議運動によって、パリの広場が半年にわたり、数十万人に占拠され続けた。彼らをはじめ世界の“怒れる若者”が、理論的リーダーとして熱烈に支持するのが、本書の経済学者ロルドンである。

現代資本主義は、私たちが生きる原動力となっている“感情”と“欲望”を偽造し、それによって経済システムの再生産に成功している。その結果、私たちは「やりがい」や「自己実現」を求めて奴隷的労働に駆り立てられ、敗者は格差社会の底辺で貧困や自殺に追いやられている。
本書は、その〈感情の構造〉=支配のメカニズムを、スピノザ哲学と社会科学の結合によって解明する理論書である。人間の情念や欲動をしばる“見えない鎖”から解き放つことによって、欲望は構造的なの批判力となり、制度的秩序を転覆する原動力となりえるのだ。

フランスを震撼させた大衆的抗議運動「夜、立ち上がれ」とロルドン
日本ではほとんど報道されないが(これには政治的な意図があるとしか思えない)、今年(2016年)、フランスは、大規模で長期的な大衆的抗議運動の嵐が、吹き荒れていた。パリのレピュブリック(共和国)広場などで、夜になると驚くほどの大勢の市民が集まり、広場を占拠し、抗議行動を行なうという社会運動が、半年近くものあいだ継続されているのだ。
「夜ニュイ・ドゥブ、立ち上がれ(Nuit debout)」と呼ばれ、広場では、社会変革に向けてさまざまな議論や交流がなされ、映画の上映やコンサートも行なわれ、解放区のような状態になっている。発端は、3月末に行なわれた「労働法改正案」への反対運動で、労組・大学生・高校生による統一デモが行なわれ、120万人もの人々が参加した。この運動は解散せずに、そのまま広場を占拠することで継続されることになったのだ。
これは、2011年に始まった「怒れる若者たち」による新自由主義への抗議の占拠運動――スペインのマドリッドから始まって全国に広がった「15M運動」、ニューヨークのウォール街を半年にわたって占拠し続けた「オキュパイ・ウォール・ストリート」等など――に連なるものと言えるだろう。
このフランスを震撼させ続けた運動の、事実上のスポークスマン、理論的リーダーが、ロルドンだった。ロルドンは、広場で演説し、さまざまな組織と討論するなど、不眠不休の日々だったようで、私がメールをしても、数カ月間まったく返事がない状態が続いていた。占拠運動は、夏になると暑さもあり落ち着きを見せてきたため、8月に入ってようやくロンドンから返信があり、本書の「日本語版序文」を送ってきてくれたというしだいである。
なお、この占拠運動の映像や動画は、インターネットに多数アップされており、ロルドンの勇姿も見ることができる。(訳者あとがきより)


【著者略歴】
フレデリック・ロルドン(Frederic Lordon)
フランスの経済学者・思想家。「フランス国立科学研究センター」(CNRS)および「ヨーロッパ社会学センター」(CSE)の研究ディレクター。1962年生まれ。
世界金融危機、欧州債務危機に対して、世界金融の構造分析の専門家としての著作を矢継ぎ早やに世に問い、いま最も先鋭的な経済学者として、世界的な注目を浴びている。そのラディカルな発言はいつも大きな話題を集め、アメリカやヨーロッパで大きなうねりとなって拡大している「怒れる者たち」(格差社会への抗議運動、緊縮財政への抵抗運動)の間に、熱狂的な支持者が多い。
とくに最近では、パリの共和国広場を半年にわたって数十万人もの市民が占拠しつづけ、欧州を震撼させた大衆的抗議運動「Nuit debout(ニュイ・ドゥブ)」(夜、立ち上がれ)において、理論的リーダーとして活躍し、今やまさに“時の人”となっている。
その一方で、哲学者スピノザの思想を現代資本主義社会の社会科学的分析に応用するなど理論家としても注目を集め、経済学を超えて思想・哲学の分野にまで影響を及ぼしている。本書は、その理論的研究の成果の一つである。
邦訳書に、『なぜ私たちは、喜んで“資本主義の奴隷”になるのか?──新自由主義社会における欲望と隷属』(杉村昌昭訳、作品社)がある。