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連合の系譜

【内容】
森羅万象がここで歌っている。
古代ギリシア・ローマから近現代に至る精神史を追跡し、限りなき連合の姿を甦らせつつ人間的営為の根源に迫る。
和辻哲郎文化賞、渋沢・クローデル賞、サントリー学芸賞受賞者である思想史家による渾身の書き下ろし、驚愕の4500枚!
なぜグレン・グールドは《ゴルトベルク変奏曲》を二度、録音したのか?


【内容目次】
凡例
プロローグ 遺されたアリア
第一部 プネウマのラプソディ Rhapsodia pneumatica
 第1章 ラプソディの時間
  1 古典派とロマン派
   偉大なる音楽と標題音楽/古典派音楽の弁証法/ロマン派の英雄/ヴァーグナー登場/偉大なる叙事詩/ロマン派の見た夢/標題音楽は勝利したのか/ロマン派音楽とは
  2 ラプソドスの系譜
   ペルチャッハの夏/ラプソドスの起源へ/ゲーテはブロッケン山で何を見たのか/「冬のハルツ紀行」/ラプソディの時間/「孤絶」の音楽/ブラームスの孤絶
  3 孤絶の時間
   グラウンド・バス/リヒャルト・シュトラウス/音楽にとって「進歩」とは何か/時間の暴力/チェンバロのようなピアノを求めて/バロックの触感/「情感の共同体」へ
 第2章 グラウンド・バスの歌――古代〜一二世紀
  1 連合という理念
   ラプソディ的多元性/ヴィルトゥオーソ誕生/芸術家のコロニー/国民主権という原理/一般意志/「連合」という理念/ニュー・ハーモニー/サン=シモン主義
  2 絶対的音楽性
   「音楽共和国」の夢/アルプス旅行/ロマの歌/原初アーリア人/ピクテからソシュールへ/絶対的連続性/ラプソディの時間、ラプソディの空間/ハイネのラプソディ
  3 動物磁気の淵源へ
   リストマニア/メスメリズム/動物磁気の淵源へ/プネウマとは何か/「神聖病」のラプソディ/プネウマ論の変遷/ガレノス/ローマの分裂からルネサンスへ/中世のプネウマ論/「三位一体」のプネウマ
  4 神秘的なプネウマ
   グノーシス主義/新プラトン主義/ストア派のプネウマ/表象の刻印/パンタシアーの変化/想像力の精気/プネウマの歌
  5 聴覚的連合
   掃除機とモーツァルト/グールドの触感
 第3章 ムシカ・ムンダーナの声――一三〜一六世紀
  1 近代のラプソドス
   楽器より前の声/ジャンヌ・ダルク/ダニエル・ステルン/ラプソドスの最期/葡萄酒とハシシュ/旋風が駆け抜ける/一九世紀のラプソディ/想像力のパルス
  2 音楽とプネウマ
   宮廷風恋愛から清新体へ/世界精気/古代の占星術/ピュタゴラスとその教団
  3 占星術と目的因
   占星術の発展/ローマの占星術/皇帝たちの占星術/プトレマイオスの伝統/占星術弾圧/目的因とは何か/キリスト教と占星術/中世からルネサンスへ/占星医術
  4 ハルモニアーの諸相
   フィチーノの音楽論/音楽から世界市民へ/プトレマイオスのハルモニアー/宇宙の歌/ムシカ・ムンダーナ/音楽を奏でる天使たち
  5 パラケルススの世紀
   パラケルススとは誰か/アルカナ/金星の病/プネウマを統御する人間/アグリッパ/宗教改革のプネウマ
  6 宇宙のポリフォニー
   カトリックとプロテスタント/ガレノス主義/パラケルスス主義/天動説から地動説へ/宇宙のポリフォニー/終わりも始まりも認めない音楽
 第4章 デタシェの技法――一七世紀
  1 近代科学とプネウマ論
   デタシェとは何か/「類似」の原理/占星術は迷信か/演繹と帰納/血液循環説の出現
  2 作用因の台頭
   デカルトの真理/平均律の完成/普遍的調和/残存するプネウマ論/情念とプネウマ/残存する神
  3 「王」の時代
   王権神授説/《ラス・メニーナス》が伝えるもの/そこに立っているのは誰か/表象されない王/二枚の画中画/王権神授説の揺らぎ/聖霊とは物質である
  4 「悪魔」の顔
   ダイモーンとは何か/プネウマとダイモニオン/一七世紀の普遍音楽/プネウマという名の悪魔
  5 磁気と医術
   一七世紀の占星医術/ハーブ療法/武器軟膏とは何か/魔術的と悪魔的/磁気力の発見/引力と磁気力/造鼻術
  6 アーティキュレーションとの訣別
   「悪魔的ではないが魔術的」なもの/アーティキュレーション/グールドからソシュールへ/パウロと異言
  7 共感と同感
   クロノスとアイオーン/意味するのを欲すること/非因果的なつながり/振り子時計と共感粉/ミラーニューロン
  8 近代科学の葛藤
   ロバート・ボイル/ボイルの周辺/プネウマの文学/ニュートン登場
  9 時代遅れのものたち
   非理性を保持する者たち/排除される精気/時代遅れの音楽/デタシェの技法
第二部 無限の連合 Associatio infinita
 第5章 ハーモニーの場所――一八世紀
  1 魔術のメディア
   対位法ラジオ/プネウマのメディア/ラジオの魔術
  2 連合と直観知
   経験論の発展/観念連合とプネウマ/スピノザ/『エティカ』/直観知とは何か/永遠の相の下で/スピノザのプネウマ
  3 可能的なものと潜在的なもの
   作用因と目的因の相克/このもの性/あらゆる述語を含む主語/ライプニッツのプネウマ/微小表象とヘンデル/モナドの連合/シュタールとの論争/ルビコン川を渡らないカエサル/可能的なものと潜在的なもの
  4 危険なプネウマ
   魂的精気から動物精気へ/根音バス/リトルネッロ/シューマンの狂気/類推の危険
  5 プネウマなき生気論
   怪物的思考/代理戦争の中の人間機械/『百科全書』のプネウマ/芸術から生気論へ/『エンサイクロペディア・ブリタニカ』
  6 情念の世界
   ヒュームの連合/観念連合の射程/不公正な情念/共通の利益か、自己の利益か/情念を乗り越える情念
  7 世界市民のまなざし
   共感か、同感か/一五〇人と一五〇〇人/ルソーの言語起源論/「見えざる手」が奏でる音楽/共感なき調和/ダランベールの夢
  8 霊媒の力能
   スウェーデンボルグ/『視霊者の夢』/必然と運命/震動と連合/理性の限界/グールドのテレパシー
 第6章 ポリフォニーの共同体――一九世紀
  1 想像力の排除
   アルペジオの真意/器官なき身体の演奏/新しい形而上学と新しい国家/感性と悟性をつなぐもの/排除される想像力
  2 それが考える
   フィリップ・ピネル/治療される狂気/リヒテンベルク/サド登場/共和主義者でありたいなら、もうひとがんばりだ/サドの精気/非理性の共和国
  3 格闘するドイツ
   ヘーゲル/情念の精神医学/ドイツの格闘
  4 情念の科学
   情念と引力/情念の科学/連合をめぐる闘争/サド=フーリエの問題圏/連合の建築/フーリエのラプソディ
  5 生気論の近代
   フーリエの残響/民主的な独裁/ルイ・ランベール/観念学とは何か/カバニスからビシャへ/近代に生気論を唱えること
  6 超越論的な目的因
   新しい目的因/ロワイエ=コラール/メーヌ・ド・ビラン/超越論的な経験/ゲーテからビランへ
  7 トリレンマの向こうへ
   ビランとバルザック/ヴィクトル・クーザン/スピリテュアリスムとは何か/民族の精神/一般的歓待/超越論的な世界共和国/プルードン登場
 第7章 クオドリベットの残響――二〇世紀へ
  1 革命の中で
   無関心な親と野放図な子供/国民国家の敵/連合の変質/クーザン批判
  2 スピリテュアリスムの射程
   ミルの導入/再生する生気論/半-スピリテュアリスム/リードという原点/作用因でも目的因でもある原因
  3 磁気術師の系譜
   海を渡る動物磁気/交霊会ブーム/スピリテュアリスムとスピリティスム/動物磁気を必要としない動物磁気説/メスメリズムから催眠術へ/催眠術と医学
  4 プルードンとマルクス
   無限の連合としての連盟/新たなる革命/マルクスのルソー/マルクスの連合/『資本論』へ
  5 プネウマの資本論
   価値形態論/マルクスの原子論/「反発」とは何か/マルクスの問い/亜麻布の狂気/スウィフトのプネウマ/非理性のすり替えでない狂気/一人の狂気から全員の狂気へ/プルードン批判の意味/マルクスのテーブル・ターニング/貨幣とヘラクレイトス/シェイクスピアのプネウマ
  6 流体から暗示へ
   大脳局在説の誕生/シャルコー/ナンシー学派から心霊研究協会へ/狂気か、新しい啓示か/パウロの回心/「銀の斧」の秘密/第三共和政下のスピリテュアリスム
  7 連合の音楽
   ブランキの革命/マリー・ダグーとブランキ/ランボーのプネウマ/「交響曲の伝統」への抵抗/グリーグ/言語学における連合
  8 催眠状態という問い
   フロイトのパリ/ナンシーのフロイト/ベルクソンの出発点/神智学の誕生/模倣の法則
  9 失語症研究
   フロイトと言語学/類推と不規則性/精神分析の曙/ル・ボンとベイン/リボー批判/交錯するベルクソンとフロイト/ベルクソンの失語症研究
  10 ラプソディと永遠回帰
   永遠回帰としてのラプソディ/群衆から公衆へ/モーリス・ラヴェル/ラジオとラプソディ/運命愛とは何か
  11 心霊研究
   日常生活の精神病理学/フルールノワとエレーヌ/心霊現象における連合/分析と直観
  12 二〇世紀の魔術
   詩人の秘法/アナグラムとバッハ/二〇世紀のプネウマ/合理が誘引する非合理の魅惑/アラン・レオ
  13 理性への恐れ
   フロイトのテレパシー/二つの顔/邂逅と訣別/ベルクソンのテレパシー/合理と理性への恐れ
  14 共同体の原理
   快原理の彼岸へ/反復強迫という悪魔/精神分析とテレパシー/フロイトによる群衆の心理学/催眠者としての父/贈与論
  15 夢解釈と星解釈
   エスとは何か/個体発生と系統発生/磁気術師ヒトラー/純粋言語/夢解釈と星解釈/ラヴェルからミヨーへ/ミヨーからガーシュインへ
  16 パサージュの中で
   ハンス・ドリーシュ/『パサージュ論』始動/寓意家の系譜/音楽なき管弦楽の織物/一九二八年の邂逅/フッサールの連合/連合と想像力/フッサールからフーリエへ
  17 無限の連合
   独裁に抗するラプソディ/最後の主著/ヒトラーの映し鏡/模倣の能力/フロイトと交錯するベンヤミン/パリのユダヤ人
  18 生気論としての唯物論
   ニューディール政策の理論/ケインズのプネウマ/連合と範列/サド、フーリエ、そしてベンヤミン
  19 シュルレアリスム
   ブルトン/シュルレアリスムの方法/ベンヤミンのシュルレアリスム/低い唯物論/バタイユのシュルレアリスム/ブルトンのシュルレアリスム
  20 クオドリベットの共同体
   ファシズムのプネウマ/アセファル/革命に至る方途/フロイトのモーセ論/無頭のラプソディ/「精神性の進歩」とは何か/ディオニュソス的真理/「頭」と対立しない「無頭」/二つのエス/理念としてのモナド/トロー城の星空/ブランキのモナド/カエサルの「瓜二つの人」/最後の仕事/「歴史の概念について」/二つの命題/クオドリベットの共同体
 エピローグ アリア・ダ・カーポ
  苦痛/生死/革命/演劇/映画/連合/分身/無頭/息吹/音楽/調律/訣別/儀式/磔刑/監禁/痙攣/再生/鞄語/翻訳/異言/社会/帰還/打撃/自殺/太陽/爆撃/戦闘/無限
後記
書誌
人名・作品名索引