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降りていこう

【内容】
〈あんたの武器はあんた自身〉母さんは言った。あたしの武器はあたしだ。

奴隷の境遇に生まれた少女は、祖母から、そして母から伝えられた知識と勇気を胸に、自由を目指す――。40歳の若さで全米図書賞を二度受賞した、アメリカ現代文学最重要の作家が新境地を開く、二度目の受賞後初の長篇小説!

 悲しみが霧雨になって降り注ぐ。スカートに指をこすりつけ、しだいに長くなってくる影のなかで地面に膝をつきながら、わが身の境遇につくづく驚かずにはいられない。この天涯孤独ぶりはどうだろう。こんなところで腰の片方には命を、もう片方には死を持ち歩いているなんて。
「どっち?」あたしは宙に向かって問いかける。「どっちを与えるべき?」夕暮れのなかを漂っていく自分の声を聞いて、少しだけ孤独がやわらぐ。
 この同じ空のどこかで、あたしのミツバチたちも飛び回っているに違いない。(…)
 この同じ空のどこかで、サフィも息を吸って吐いているに違いない。
「サフィ」あたしは尋ねる。「どっち?」(本書より)


【著訳者略歴】
ジェスミン・ウォード(Jesmyn Ward)
ミシガン大学ファインアーツ修士課程修了。マッカーサー天才賞、ステグナー・フェローシップ、ジョン・アンド・レネイ・グリシャム・ライターズ・レジデンシー、ストラウス・リヴィング・プライズ、の各奨学金を獲得、および2022年米国議会図書館アメリカ・フィクション賞を受賞。『骨を引き上げろ(Salvage the Bones)』(2011年)と『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え(Sing, Unburied, Sing)』(2017年)の全米図書賞受賞により、同賞を2 度にわたり受賞した初の女性作家となる。そのほかの著書に小説『線が血を流すところ(Where the Line Bleeds)』および自伝『わたしたちが刈り取った男たち(Men We Reaped)』などが、編書にアンソロジー『今度は火だ(The Fire This Time)』がある。『わたしたちが刈り取った男たち』は全米書評家連盟賞の最終候補に選ばれたほか、シカゴ・トリビューン・ハートランド賞および公正な社会のためのメディア賞を受賞。現在はルイジアナ州テュレーン大学創作科にて教鞭を執る。ミシシッピ州在住。

石川 由美子(いしかわ・ゆみこ)
琉球大学文学科英文学専攻課程修了。通信会社に入社後、フェロー・アカデミーにて翻訳を学び、フリーランス翻訳者として独立。ロマンス小説をはじめ、「ヴォーグニッポン」、「ナショナルジオグラフィック」、学術論文、実務文書など、多方面の翻訳を手掛ける。訳書に、『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』、『骨を引き上げろ』、『線が血を流すところ』(以上作品社)など。

青木耕平(あおき・こうへい)
アメリカ文学、愛知県立大学講師。