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心は燃える

【内容】
幼き日々を懐かしみ、愛する妹との絆の回復を望む判事の女と、
その思いを拒絶して、乱脈な生活の果てに恋人に裏切られる妹。
先人の足跡を追い、ペトラの町の遺跡へ辿り着く冒険家の男と、
名も知らぬ西欧の女性に憧れて、夢想の母と重ね合わせる少年。

ノーベル文学賞作家による珠玉の一冊!


ペルヴァンシュはまたもかたくなになっていた。クレマンスが表しているものすべてを、社会的地位だの、責任だの、権威だのを憎んでいた。ある瞬間、こんなあばら家を出て、あんなひどい人たちから遠く離れたところに行けるようにあなたを助けてあげられるわ、お金を貸してあげられるわと、ぎこちなく口にした。ペルヴァンシュは猛然と反発した。(「心は燃える」より)

きっと、アリがひとこと頼みさえしたら、サマウェインは自分の宝物を見せただろう。手紙の束を、何枚もの黄ばんだ写真を、そしてなによりも、女性の腕に抱かれた赤ん坊がうっすらと写っている写真を。海の向こうからやってきた金髪の女性、父を連れて行ったその女性を、サマウェインは母と呼んでいる。(「宝物殿」より)


【内容目次】
心は燃える
冒険を探す
孤独という名のホテル
三つの冒険
カリマ
南の風
宝物殿
各篇解題
訳者あとがき


【著訳者略歴】
J・M・G・ル・クレジオ(Jean-Marie Gustave Le Clezio)
1940年、南仏ニース生まれ。1963年のデビュー作『調書』でルノドー賞を受賞し、一躍時代の寵児となる。その後も話題作を次々と発表するかたわら、インディオの文化・神話研究など、文明の周縁に対する興味を深めていく。主な小説に、『大洪水』(1966)、『海を見たことがなかった少年』(1978)、『砂漠』(1980)、『黄金探索者』(1985)、『隔離の島』(1995)、『嵐』(2014)など、評論・エッセイに、『物質的恍惚』(1967)、『地上の見知らぬ少年』(1978)、『ロドリゲス島への旅』(1986)、『ル・クレジオ、映画を語る』(2007)などがある。2008年、ノーベル文学賞受賞。

中地義和(なかじ・よしかず)
1952年、和歌山県生まれ。東京大学教養学科卒業。パリ第三大学博士。現在、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授。専攻はフランス近現代文学、とくに詩。著書に、『ランボー 精霊と道化のあいだ』(青土社)、『ランボー 自画像の詩学』(岩波書店)など。訳書に、『ランボー全集』(共編訳、青土社)、J・M・G・ル・クレジオ『嵐』(作品社)、『黄金探索者』(新潮社/河出書房新社)、『ル・クレジオ、映画を語る』(河出書房新社)、『隔離の島』(筑摩書房)、A・コンパニョン『書簡の時代──ロラン・バルト晩年の肖像』(みすず書房)など。

鈴木雅生(すずき・まさお)
1971年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。パリ第四大学博士。現在、学習院大学文学部教授。専攻はフランス近現代文学。著書に、J.-M.G. Le Clezio : evolution spirituelle et litteraire. Par-delal'Occident moderne (L'Harmattan)、『フランス文化事典』(共編著、丸善出版)など。訳書に、ベルナルダン・ド・サン=ピエール『ポールとヴィルジニー』(光文社古典新訳文庫)、ジェニフェール・ルシュール『三島由紀夫』(祥伝社新書)、レーモン・クノー『きびしい冬』(水声社)、J・M・G・ル・クレジオ『地上の見知らぬ少年』(河出書房新社)など。