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マスタベーションの歴史

【内容】
マスタベーションは、プルードンをして「青春を破壊させる恥ずべき行為」と書いているように恐ろしい罪悪とみなされてきた。医師たちは「健康をむしばみ自己破壊にいたる死の習慣」であると、さまざまな医学的根拠を述べたててきた。ある著名な医師は「ヨーロッパを襲った伝染病や大戦争を超える多数の人々が、オナニーによって死んでいる」と主張している。
それは第二次世界大戦後の1960年代までつづき、少年・少女たちに恐怖に脅える青春時代を押しつけてきたのである。その「オナニー害悪論」とは、どのように形成され、青少年たちに押し付けられてきたのか?本書は、18世紀の「害悪論」の古典として著名な『オナニア』(ティソ)から、現代の「解放論」にいたるまでのオナニー論の[原典]にあたりながらまとめられた、世界で初めての「オナニーの歴史書」である。
「アナニスム論」は、日本でも90年代以降、「セクシャリティー論」の一つとしてたいへん注目を集めている。本書のようにその歴史を原典にあたりながらしっかりとまとめられたのは世界でも初めてであり、きわめて資料的価値が高いものである。さらに異色の文化史として、悩み多き青春の日々を思い出しながら面白くおかしく読めるものである。

【内容目次】
 はじめに
第1章 マスタベーション論の元祖たち
1.氏名不詳氏の『オナニア』
2.ティソの『オナニスム』
3.いくつもの症例
4.精液の重要性
5.『オナニスム』登場の意味
6.さまざまな対症療法
7.害悪論の背景
8.ティサとジャン=ジャック・ルソー
9.さらにもう一の害悪論
 第1章註
第2章 ウィリアム・アクトンのマスタベーション論
1.アクトンの治療法
2.ジャン=ジャック・ルソーとアクトン
3.その「最悪」の害
4.アクトンの「発狂」説
5.アクトンの「精液漏」論
6.アクトンをどのように評価するか
 一、アクトンの女性観についての批判
 二、マスタベーションのステレオタイプを拡大したのみ、という評価
 第2章註
第3章 ヴィクトリアン・アメリカのマスタベーション論
1.ベンジャミン・ラッシュの「発狂」説
2.正気と狂気の違い
3.シルヴェスター・グレアム ―― 食餌改良によるマスタベーションの防止
4.ラルマンの「精液漏」説
5.エレン・G・ホワイトの「厳粛な訴え」
6.骨相学者のマスタベーション論 ―― O・J・ガウラーの『性の科学』
7.マスタベーションと軍隊 ―― ロバート・バーソロウのマスタベーション論
8.マーク・トゥエインの演説
9.ケロッグの言ったこと、作ったもの
10.母親のマスタベーション
11.自転車=マスタベーションの原因論
12.クラフト・エービングの「変態性欲」論
 第3章註
第4章 近代的心理学とマスタベーション
1.スタンリー・ホールのマスタベーション論
2.古典的マスタベーションからの離反
3.近代的心理学の開祖 ―― ヘンリー・ハヴェロックの足跡
4.フロイトの保守主義
5.W・シュテーケルのマスタベーション論 ―― さわやかな断定
6.グレイゾーンにいた二人の同時代人 ―― フォレルとブッロホ
マスタベーションは心気症の原因ではない
従来のマスタベーション論との格闘
7.W・ライヒの性革命論 ―― 彼は釆書と焚獄の経験者だった
禁欲は健康をそこなう
禁欲の害から逃れる手段としてのマスタベーション
 第4章註
第5章 マスタベーションとアンチ・マスタベーションの論理と心理を総括する
1.聖書とマスタベーション
2.古代ギリシャ、ガレノスの肯定論
3.マスタベーション防止器具のいろいろ
4.否定論はどのように議論されてきたのか
一、ヘアーの説
二、アーサー・N・ギルバートの見解
三、ルネ・スピッツの評価
四、H・トリスタン・エンゲルハルトの説
五、ハラーとハラーの見解
六、以上の諸説を踏まえたギルバートの自説
5.R・P・ニューマンの見解
6.ジョン・マネーの総括
一、アンチ・マスタベーションの医学マニアたち
二、マスタベーションの矯正法
三、害悪論はしぶとかった
四、その結果としての間違った考え方
五、マスタベーションはホモセクシュアリティの原因になる、という誤解
六、社会的伝染理論
七、マスタベーションのすすめ
 第5章註
最終章 マスタベーションの復権

あとがき

【著者紹介】
石川弘義1933年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒。社会心理研究所、コロンビア大学研究員を経て、現在、成城大学教授。社会心理学専攻。主な著者に、『欲望の戦後史』(講談社、1966/清水弘文堂、1971/大平出版社、1981/廣済堂、1989)『生きる心理死ぬ心理』(新日本出版社、1997)『広告から読む男と女』(編著、雄山閣、2000)ほか。