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この社会で働くのはなぜ苦しいのか
現代の労働をめぐる社会学/精神分析

【内容】
《「 働き方改革」では語られないこと》
「本書は、労働が現在と新しい社会においてどのようなものとしてあるのか考察するにあたり、これまでの議論で欠けている、他者との関係で構成される主体の観点において、精神分析の枠組み、およびそれが社会構造と関与する点について社会学の枠組みで考察する」(本文より)。
現在、ネオリベラリズム(新自由主義)という新たな社会体制が、私たちの「労働」のあり方を一変させ、さまざまな歪みを生み出している。
ラカン精神分析やフランス社会学の知見を武器に、今日の「労働」が抱える問題の根底に社会構造と主体の変容を見出し、「就活」「コミュニケーション」「マネジメント」「うつ」など多角的・多層的な観点から精緻に読み解く。

【内容目次】
序章 現代社会における「働くこと」
1 自明性が壊れた社会における「働くこと」
2 「賃労働社会」の動揺
3 労働の道具的コミュニケーション化
4 労働からの解放とその方法
5 資本主義経済と「死の欲動」
6 「資本主義の精神」の不在

第1部 若者――就活の倒錯化と若者の「コミュ障」化
第1章 『何者』と「就活デモ」を結ぶ線
1 小説『何者』
2 「意識高い系(笑)」批判by「意識低い系」
3 就活デモ

第2章 「コミュ障」文化という居場所
1 「チーム学校」におけるコミュニケーション
2 「自称」・「自嘲」としての「コミュ障」
3 「コミュ障あるある」と「成長物語」
4 『ワタモテ』と「高二病」
5 『NHKにようこそ!』と「残念系ラブコメ」
6 コミュ障の前身としての「対人恐怖症」
7 コミュニケーションにおけるモニタリングとそのループ
8 「準自己」と反動形成としての「恋愛工学」

第3章 教育から労働および社会への「トランジション」
1 「トランジション」の浮遊
2 教育の大衆化・多様化に対する政策
3 〈新しい能力〉論
4 社会保障の教育化
5 評価と測定が教育にもたらす影響
6 「学生エンゲージメント」

第2部 企業――組織流動化時代のマネジメント・イデオロギー
第4章 浮遊する組織を埋める「ストーリーテリング」
1 「ストーリーテリング」と「ナラティヴ秩序」
2 「マネジメントの全社会化」
3 「コーチング」という新しいマネジメント
4 組織からの/への「要求」――マクドナルドにおける事例

第5章 日本社会におけるマネジメント・イデオロギー
1 「資本主義の新たな精神」
2 「ポスト全体主義」体制
3 「ストーリーテリング」
4 臨床社会学による企業組織分析
5 日本の企業経営と人材マネジメント

第3部 福祉・医療――当事者の「恥」と「無意識の罪責感」
第6章 生活保護における「制度的逆転移」と「恥」からの回復
1 「適正化」と「不正受給」の社会学
2 近代的「理念」と前近代的「運用」のずれ
3 メディアが仮構する「アンダークラス」と過剰排除/包摂
4 福祉の側から向けられる「制度的逆転移」と当事者の「恥」
5 生活保護者の内面と関係の回復

第7章 「過剰正常性」という症状と精神医療の崩壊
1 ネオリベ社会におけるうつ
2 日本企業におけるうつ
3 うつへの防衛(躁的防衛)としてのネオリベ心理文化
4 「ネオ精神医学」を生み出したニューロサイエンス社会
5 「幸福」規範の専制と疾病利得
6 DSMの自己崩壊と「例外」として回帰する主体

おわりに
註/あとがき/参考文献

【著者略歴】
樫村愛子(かしむら・あいこ)
1958年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科社会学専攻博士課程満期退学。現在、愛知大学文学部人文社会学科社会学コース教授。専門は社会学・精神分析(ラカン派精神分析の枠組みによる現代社会・文化分析)。著書に、『「心理学化する社会」の臨床社会学』『ラカン派社会学入門――現代社会の危機における臨床社会学』(以上、世織書房)、『ネオリベラリズムの精神分析――なぜ伝統や文化が求められるのか』(光文社新書)、『臨床社会学ならこう考える――生き延びるための理論と実践』(青土社)など。