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リヒテンベルクの雑記帳

【内容】
ズボンを二本持っている者は、一方を金に換えこの本を買え。

ニーチェが「ドイツ散文の宝」と賞賛し、ホーフマンスタール、ウィトゲンシュタイン、フロイト、ベンヤミン、ブルトンら、二十世紀の思想や文学に巨大な足跡を残した人びとに多くの刺激を与え、エリアス・カネッティが「世界文学におけるもっとも豊かな書物」と呼んだドイツ・アフォリズム文学の嚆矢!

十八世紀後半のヨーロッパにおける文化史・思想史・科学史の貴重なドキュメントの全貌に迫る、画期的訳業。詳細な解説・年譜付。


 一七七〇年から世紀の変わる直前まで、ゲッティンゲンにひとりの人気教授がいた。ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルクという。多彩な実験で受講者を魅了し、文筆家としても著名で、学問的にも尊敬されていた。……死後、大量のノートが発見された。三十五年にわたりひそかに書き続けられたもので、最初の著作集の第一巻と第二巻でわずかな断片が公表されたとき、人々はその存在を知った。以来、ながく〈アフォリズム〉として、のちにはまったく独自の在り方をした書物として、このノート群は笑いや驚きと共に読まれ、引用されてきた。ニーチェ、マッハ、ホーフマンスタール、ウィトゲンシュタイン、フロイト、ベンヤミン、ブルトン、カネッティら、二十世紀の思想や文学に巨大な足跡を残した人々も、ここから多くの刺激を受けている。カネッティは「世界文学におけるもっとも豊かな書物」と呼んだ。
 それは、リヒテンベルクという特異な存在を通してみた十八世紀後半の社会と人間の観察記録であり、文化史・思想史・科学史の貴重なドキュメントであり、〈思考の実験室〉における実践の記録だった。(本書「はじめに」より)


【著訳者略歴】
ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク(1742-1799)
1742年、牧師の家に生まれる。ゲッティンゲン大学で数学、天文学、自然学(フィズィーク)などを学ぶ。学生時代、上流階級出身イギリス人学生の家庭教師兼世話係を務めた縁で、イギリス王家とのつながりができる。1770年、ゲッティンゲン大学教授。1770年および1774‐75年のイギリス旅行―そこではキャプテン・クックの世界周航に同行したゲオルク・フォルスターなどとも親交を結んだ―を除いては、ほぼゲッティンゲンという小さな大学街で暮らす。実験自然学の教授として、講義ではさまざまな実験を披露し、学生以外にも多くの聴衆を集めた。科学者としては、放電現象に伴うリヒテンベルク図形の発見(1777年)で著名。同年より雑誌『ゲッティンゲン懐中暦』を編集、自らも多くの記事を執筆する。ユーモアに富んだ啓蒙的な記事は広く読まれた。イギリスの画家・版画家ホガースの諷刺的銅版画に注釈を施した連載記事は、単行本にまとめられ、ドイツ以外の地でも文名を高めた。1799年没。葬儀には500人以上の学生が参列したという。死後、35年余り人知れず書かれてきたノート類が発見される。のちに『雑記帳』と呼ばれるこのノートが刊行されると、ショーペンハウアー、ニーチェ、フロイト、ヴィトゲンシュタインなどにも大きな影響を与えることとなった。

宮田眞治(みやた・しんじ)
1964年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退。神戸大学文学部を経て、東京大学大学院人文社会系研究科教授。研究領域は近代ドイツ文学・思想。