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映画少年

【内容】
戦後日本の映画界は戦時中の国策映画への反省から、GHQに派遣されたデイヴィッド・コンデなどのニューディーラーの指導のもと、反戦・反権力的な傾向を強めていった。しかし、昭和25年から始まる朝鮮戦争に向けて東西緊張が高まるなか、容共勢力を駆逐する名目でアメリカ本土ではマッカーシー旋風が吹き荒れる。その矛先が当時最大の大衆娯楽であり、また影響力の大きなハリウッドの映画産業に向けられたように、日本でも昭和23年、GHQの方向転換に応じて、映画界から二つの赤(赤字と共産主義)を払拭する名目で、組合活動家を中心に270名に及ぶ大量解雇が東宝映画の会社側から提示された。世に言う「東宝争議」の始まりである。 「来なかったのは軍艦だけ」といわれ、アメリカ軍の戦車や飛行機までが出動したこの争議は、決して単なる私企業の合理化・首切り問題だけでなく、これまでに獲得された生産現場での民主主義の根幹にかかわる問題として、広くマスコミ・文化人の関心を引くことになる。 このとき組合委員長を勤めたのが、当時東宝のプロデューサーであった伊藤武郎であり、本書の著者昌洋はその次男に当たる。事態の収拾に当たって伊藤は、自らを含め、亀井文夫、山本薩夫、今井正ら20名の幹部の退職を条件に、残り250名の残留を取り付ける。そして東宝を退社した彼らは独立プロ映画運動を起こし、『どっこい生きている』『真空地帯』『ひめゆりの塔』『キクとイサム』『ああ野麦峠』など、映画ファンの心に残る名作を作りつづけることになる。 本書は、当時小学生であった著者の視点から、「東宝争議」とそれに関わる映画人たちの姿を実名で描き、当時最高の娯楽であった映画の胸躍らせた山の手の多感な少年の生活を生き生きと描いている。

【内容目次】
序章
第1章 昭和22年・世田谷
     1 赤いカンナの咲く家
     2 砧小学校
     3 『戦争と平和』
第2章 マッカーサー元帥の映画
     4 亀ちゃんと宮ちゃん
     5 皇居とGHQ
     6 栄養失調
     7 魚茂(ウロシゲ)
     8 『風と共に去りぬ』
     9 実子と武郎の出会い
第3章 東宝争議
    10 10人の旗の会
    11 お風呂屋
    12 綾子ちゃん
    13 ターザンの映画
    14 『酔いどれ天使』
    15 映画少年・正彦
    16 デイヴィッド・コンテ
    17 首切り
    18 ベーゴマ・メンコ・ビー玉
    19 撮影所のお祭り
    20 家族会
    21 決戦の日
第4章 独立プロの映画
    22 氷水屋といっぱい飲み屋
    23 母の肺結核
    24 綾子ちゃんとの別れ
    25 揚げまんじゅう
    26 『暴力の街』
    27 兄・和彦
    28 『どっこい生きている』
    29 魚採り
    30 すき焼きを食べた日
    31 差し押さえ
終章

【著者紹介】
伊藤昌洋(いとう・まさひろ)1941年東京生まれ。学習院大学卒業後、大映入社。増村保蔵の助監督を経てフリー。NTV「日曜美術館」など多数を制作。小説に『幸福の肖像』('92講談社)がある。