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【「新青年」版】黒死館殺人事件

【内容】
日本探偵小説史上に燦然と輝く大作の「新青年」連載版を初めて単行本化!
「新青年の顔」として知られた松野一夫による初出時の挿絵もすべて収録!
2000項目に及ぶ語註により、衒学趣味(ペダントリー)に彩られた全貌を精緻に読み解く!
世田谷文学館所蔵の虫太郎自身の手稿と雑誌掲載時の異同も綿密に調査!
“黒死館”の高楼の全容解明に挑む、ミステリマニア驚愕の一冊!


本書は『黒死館殺人事件』の初出誌「新青年」を底本とし、世田谷区立世田谷文学館所蔵の小栗虫太郎自身の手稿と照合した上で校訂、註釈を加えたものである。
『黒死館殺人事件』は本書発行以前より、多くの出版社から若干の異同を含みつつ刊行されてきたが、基本的には新潮社版を、唯一の著者本人の校訂を経た底本としてきたと言ってよい。そしてこれまでも、有為の先人によって、本文の検討作業が行われてきたが、著者の早逝や戦後の混乱もあって、手稿の存在が明らかにされない状態での、不十分な作業となってきたことはやむを得なかった。
筆者は一九七〇年以降「黒死館語彙」の蒐集調査を続けてきたが、故・松山俊太郎氏の慫慂を請け、一九七六年、教養文庫版『黒死館殺人事件』の校訂に協力させて頂いた。その編集方針は、初めて「新青年」版との本文校訂を行った上で、正確を期すということであった。しかしながら、その際も多くの問題点を著者の誤謬、捏造として処理せざるを得なかった。筆者は教養文庫版刊行以降も、黒死館の諸相について調査を続けてきたが、そうした疑問点を残したまま現在に至った。幸いにもその後、手稿旧蔵者が判明し、世田谷文学館が入手したため公開閲覧が可能となり、今回の企画が成立した。
山口雄也「解題」より


【著者/挿絵画家/註・校異・解題執筆者/解説執筆者略歴】
小栗虫太郎(おぐり・むしたろう)
小説家。1901年東京生まれ。本名、小栗栄次郎。1927 年、「或る検事の遺書」を、「探偵趣味」10月号に発表(織田清七名義)。1933年、「完全犯罪」を「新青年」7月号に発表。「新青年」10月号に掲載された「後光殺人事件」に法水麟太郎が初めて登場する。1934年、『黒死館殺人事件』を「新青年」4〜12月号に連載。他の著書に、『オフェリヤ殺し』、『白蟻』、『二十世紀鉄仮面』、『地中海』、『爆撃鑑査写真七号』、『紅殻駱駝の秘密』、『有尾人』、『成層圏の遺書』、『女人果』、『海螺斎沿海州先占記』などがある。1946年没。

松野一夫(まつの・かずお)
洋画家、挿絵画家。1895年福岡県生まれ。1921年5月号で「新青年」の表紙絵を初めて担当。1922年3月号から1948年3月号までの26年間、同誌の表紙を描き続け、“新青年の顔”の異名をとった。『黒死館殺人事件』をはじめとして「新青年」掲載の作品に挿絵を提供したほか、児童文学の挿絵も数多く手掛けている。1973年没。

山口雄也(やまぐち・かつや)
1947年神奈川県生まれ。1970年、現代思潮社美学校第一期修了。1976〜78年、松山俊太郎の下で現代教養文庫版『黒死館殺人事件』(社会思想社)校訂作業に従事。2005年以降、素天堂名義で個人誌「黒死館逍遥」シリーズを発行。

新保博久(しんぽ・ひろひさ)
ミステリ評論家。1953年京都市生まれ。早稲田大学美術科卒。2001年、『日本ミステリー事典』(新潮社)により第1回本格ミステリ大賞を、2003年、『幻影の蔵 江戸川乱歩探偵小説蔵書目録』(東京書籍)により第56回日本推理作家協会賞を、それぞれ権田萬治、山前譲と共同受賞。著書に『ミステリ編集道』(本の雑誌社、2015年)など、編書に『泡坂妻夫引退公演』(東京創元社、2012年)などがある。