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鈴木清順論 影なき声、声なき影

【内容】
未映画化脚本『夢殿』を中心に据えた三本の論考から、重要キーワードを鏤めて諸作品の横断的な読み解きを試みた「事典」、清順も参加した脚本ユニット「具流八郎」をめぐる初めての批評、そして全監督作品の精緻な解説まで。多角的な視点で、日本映画の異形の巨人の全体像を解き明かす!
圧倒的スケールで打ち建てる、映画評論の金字塔!
第71回芸術選奨文部科学大臣賞受賞作!

 鈴木清順と聞いて現在、人は何をイメージするだろう、あるいは彼を「何者」と人は定義するだろう。映画監督に決まっている。それはその通り。本書においてそれ以外の相貌で彼が現れることは原則ない。『けんかえれじい』を撮った、もしくは『ツィゴイネルワイゼン』を撮った、伝説的映画監督。映画ファンならそう答える。(…)しかし本書において清順は誰でも「テレビで知ってる」映画監督というその顔のレベルとは違うレベルで存在している。むしろ知らない清順の顔をそこに存在せしめるためにこの本はある。(…)『けんかえれじい』は誰をも親しませる「昔の名作」であると同時にギャップだらけのヘンな現代映画になっている。このちょっとした発見が本書『鈴木清順論 影なき声、声なき影』において清順映画を捉えるキー・コンセプトである。つまり、本書は清順映画のいくつかを伝説の名画や公認の名作でなくするために書かれたものだ。そのとき、清順もまた伝説の映画監督ではなくなっているだろう。(…)デビュー作『勝利をわが手に 港の乾杯』における「裸足」の重要性というのは私しか書いていないし、書く価値があるともそもそも思われていない。(…)同時代の評価というのはあまりにいい加減なものだが、逆に言えば今こそ発見されるべき清順映画がたくさんあるということでもある。要するに清順映画は最初から最後まで魅力的でいつでも誰でも楽しめる娯楽映画。それを皆さまと一緒に楽しみたい、というのが本書唯一の望みなのだ。
(本書「はじめに」より)


【内容目次】
はじめに

『夢殿』サイクル論T 二重化人物像の系譜
イントロ、あるいは『夢殿』サイクルとは/二重化人物像と三角関係 初期作品『らぶれたあ』を巡って/心中の骨壺、『ツィゴイネルワイゼン』/増殖する骨壺、『陽炎座』/裏表の人々、『夢二』

『夢殿』サイクル論U 騒がしい静寂の映画群
イントロ、あるいは音の人、清順/警告する音、『木乃伊の恋』/鉦の音は誘う、誰を?/入定の定助たち/幻聴の共鳴/つぶやきは繰り返される、『ツィゴイネルワイゼン』/増幅する「つぶやき」/ラップ音、聴こえない音/柔らかいもの/硬いもの/硬い音、硬いもの、柔らかいもの/狂ったお囃子と無音の手招き、『陽炎座』と『夢殿』/夢の彷徨いと軌道修正、『陽炎座』から『夢二』へ/山の木霊と夢二の銃/不発のピストルと夢の銃声、『東京流れ者』の記憶から

『夢殿』サイクル論V 清順的建築、清順的空間
イントロ、あるいは『神獣の爪』の空間演出から/空間1:『勝利をわが手に 港の乾杯』と『悪魔の街』の複数の箱/空間2:『素ッ裸の年令』と『8時間の恐怖』の「外観を備えた」箱/しきうち視線としきうち空間/空間3:箱の氾濫とその統治、『野獣の青春』/空間4:埋められた箱、『木乃伊の恋』、『肉体の門』/空間5:箱の中の箱の中の箱、『肉体の門』、『悲愁物語』/正確な箱と不完全な歯車

清順映画キーワード事典
浅田健三/穴/家、下宿/泉鏡花/移動ショット/刺青/色/歌/器/鬼/女/カード、札/階段/鏡/隠された顔/壁、ガラス板/髪と髪型/球/空間と説話/首/具流八郎/車/結界/玄関/幻聴/声と影/骨壺/酒場、喫茶店/桜/猿島/ジャンル映画/銃身、銃痕、銃声/少年、兄弟/スクリーン/増殖/吊り、逆さづり/出入り/テレビドラマ/塔、樹木/動線/流れ者/野口博志/箱(と箱)/踏切、橋/ボクシング/リメイク/列車

具流八郎の日本映画史
『情事の履歴書』/『続・けんかえれじい』/『ゴースト・タウンの赤い獅子』/『(題未定)』/『続・殺しのらくいん(烙印)』/『人斬り数え唄』/『鋳剣』/『木乃伊の恋』/『黄土の狼』/『夢殿』/『八月はエロスの匂い』/『母に捧げるバラード』/『タハリール・アル・スエズ』/『星女郎』/『アメリカ綺譚 桃中軒海右衛門』/『穴の牙』/『春桜ジャパネスク』『らぷそでい』

具流八郎の生き残りとして プロデューサー岡田裕インタビュー

清順映画作品解説
1『勝利をわが手に 港の乾杯』/2『海の純情』/3『悪魔の街』/4『浮草の宿』/5『8時間の恐怖』/6『裸女と拳銃』/7『暗黒街の美女』/8『踏みはずした春』/9『青い乳房』/10『影なき声』/11『らぶれたあ』/12『暗黒の旅券』/13『素ッ裸の年令』/14『その護送車を狙え』/15『けものの眠り』/16『密航0ライン』/17『すべてが狂ってる』/18『くたばれ愚連隊』/19『東京騎士隊』/20『無鉄砲大将』/21『散弾銃の男』/22『峠を渡る若い風』/23『海峡、血に染めて』/24『百万弗を叩き出せ』/25『ハイティーンやくざ』/26『俺に賭けた奴ら』/27『探偵事務所23 くたばれ悪党ども』/28『野獣の青春』/29『悪太郎』/30『関東無宿』/31『花と怒涛』/32『肉体の門』/33『俺たちの血が許さない』/34『春婦伝』/35『悪太郎伝 悪い星の下でも』/36『刺青一代』/37『河内カルメン』/38『東京流れ者』/39『けんかえれじい』/40『殺しの烙印』/41『悲愁物語』/42『ツィゴイネルワイゼン』/43『陽炎座』/44『カポネ大いに泣く』/45『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』/46『夢二』/47『結婚 原田・陣内御両家篇』/48『ピストルオペラ』/49『オペレッタ狸御殿』

おわりに
索引


【著者略歴】
上島春彦(かみじま・はるひこ)
1959年生まれ。映画評論家。国学院大学文学部卒業。著書に、『血の玉座――黒澤明と三船敏郎の映画世界』、『レッドパージ・ハリウッド――赤狩り体制に挑んだブラックリスト映画人列伝』(以上作品社)、『宮崎駿のアニメ世界が動いた――カリオストロの城からハウルの城へ』(清流出版)、『60年代アメリカ映画』(エスクァイアマガジンジャパン、共著)、『モアレ――映画という幻』(世界思想社)などがある。